コズミック

清涼院流水のデビュー作にして、壮大な大法螺ワールド、『JDCシリーズ』の幕開けになる作品です。
最初に予告殺人がぶちまけられるわけですが、その人数がなんと1,200人。
すごい事ですが、この後書かれた『カーニバル』という作品では数万人とか数億人の単位で人が死ぬのでもはや何でもありの世界。
何よりも、よくこんな作品を作ろうと思うな、とそこに感動してしまいます。

作品の感想。
好き嫌いがはっきり分かれる作品ですが、嫌いな人も最後まで読んだ上で壁に叩きつけてほしい作品です(何だそりゃ)。
ラストで明かされるトリック(?)と、真犯人には色々な意味で驚かされるはずです。
…個人的に好きなので好意的な事を書きましたが、ラストの会見の場面、普通の人は犯人の名前を聞いた瞬間に卵を投げつける準備をするだろうなぁ、と思ったり思わなかったり。
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塗仏の宴

1,000ページの文庫本で上下巻セット。
例によって京極堂シリーズです。
昨日少し書いた短編集より前の話で、先にこっちを読んでいたのですが感想は後回しにしていました。

本編は…分かりやすさで言うととても分かりやすいです。
意外だな、と思ったのは以前のシリーズで登場したある人物の死。
最後に登場したシーンから考えると、まさか死ぬとは思いませんでした。

起こった事件については…何とも言えません。
催眠術が使われるのですが、そこまでやってしまうと話が破綻するのでは、というくらいに大胆な事をやってくれます。
『姑獲鳥』にしてもトリックは…なので、そういうものと思うべきなのかもしれませんが。

前回出番がほとんどなかった関口先生を含めて、総出演という感じで各キャラクターが動く様子は確かに圧巻です。
ただ、何となくキャラクターに頼りすぎたところがあるような気がしました。
それから、今回の事件の真犯人と言うべき人物も野放しのまま終了。
次回作以降に明確に持ち越されてしまったのは少しいただけません。

ちょっと文句が多くなりましたが、なんだかんだ言っても次回作の気になるシリーズではあります。
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絡新婦の理

これは分かりにくい…
ただでさえ1,000ページを超える大作なのに加えて、話もいくつもの場所や時間に飛び、致命的なことに途中で数週間開けて読んでしまったため、読み直しを余儀なくされました。
京極夏彦さんで、京極堂シリーズの5作目にあたる作品です。

まずは感想から。
今回も推理がどうというお話ではありません。
そのあたりは作中でも語られており、あくまでも憑き物を落とすだけだ、とくどい程に念を押しています。
その憑き物にしても、妖怪の類そのものが登場する事は、もちろんありえません。
ただ事件があり、その構造をもって怪異を成すとでも言いますか…
一作目の『姑獲鳥の夏』で、すでに妖怪がどこにいるのかは示唆されていますが、今回もそれに忠実と言えるのかもしれません。

それから、シリーズものなので当たり前と言えば当たり前なのですが、このシリーズは特に、一作目から読みましょう。
犯人及び準犯人と言うべき人物を含む登場人物が再登場する上、意外に重要な位置を占めたりする事がままあります。
キャラクターの魅力によって面白さが増すお話なので、なるべく登場人物に関する情報は仕入れておくべきでしょう。

バカ考察ここから。
この作品の裏テーマは、ずばり変態ではないのかという邪推。
少年/少女趣味に始まる変態趣味が、話に結構絡んできます。
今回は女装趣味が登場して、女権問題と絡んで大いに話を盛り上げてくれました(と、いうほどでもないか?)。
まあ京極堂曰く「女装は怖くないー、自分に自信を持って下さいー」だそうなので、ボブも安心して5万円の銀様コスプレセットを買おうという事です。
すべてを台無しにして、感想終わり。
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VS長門有希の100冊『誰彼』

N月R太郎(JDCシリーズを参照)こと、法月倫太郎さんの作品です。
100円で売っていたらしい、ボブの大好きなゲームではありません。

中身は推理小説です。
冒頭で三人兄弟(双子を含む)の存在が提示され、その三人を中心に色々と事件が起こるお話。
推理ものに双子が存在する段階で明らかに怪しいわけですが、ひねってひねって、またひねって…と最終的な結論にたどり着かせない工夫がなされています。

…いますが、いまいちトリックの驚きであるとか、意外な背景、あるいは文章表現など飛びぬけた面白さはなかったかもしれません。
面白いのは確かなんですが、突き抜けた面白さはなかったと言いますか。
作中人物である法月警視は個人的に好きですけれど。

長門有希の100冊、現在8冊。
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クビキリサイクル

デスノートの小説発売記念、今更ながら西尾維新さんです。
実はこの『クビキリ〜』に始まる戯言シリーズは苦手で、敬遠していました。
何が苦手かと言うと、語り手のいーちゃんが苦手です。
理由は簡単で、うじうじとした奴と思う反面、自分の身を振り返ってしまうようなところがあるため。
意図してそうしたキャラクターにされているのかもしれませんが、変なところの波長があってしまいすぎたようです。

そのあたりを抜きにして作品について話します。
戯言シリーズはミステリに分類されると思いますが、ミステリとしては普通の話です。
明らかに普通ではない状況ですが、ミステリと思えば普通。

ただ、これは事件を解決してめでたしめでたし、というお話ではないなと思います。
実際、事件解決後もいーちゃん自身は大して変化したようにも思えませんし、犯人に至っては法的制裁を受けていません。

やはりこの話は、登場人物そのものの面白さに引っ張られていると思います。
実際、好き嫌いは抜きにして作中の人物は癖のある人物ばかり。
私はたまたま、その中の中心人物であるいーちゃんが苦手なためにこの作品が苦手なわけです。
それでも、こいつは苦手だと感じさせるあたり、キャラクターの描き方がうまいという事なのかな、とは思いますけど。
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VS長門有希の100冊『ギリシア棺の謎』

エラリー・クイーンによる、有名推理小説シリーズの一編です。
日本での初版は1959年で、文章も年季が入っているのと、翻訳特有の読みにくさとで、とっつきにくいところはあります。

本編の感想。
戦前の作品なので仕方ないのですが、文章同様に、やや古さを感じます。
タイプライターの仕様に関する話(シフトキーなんてあるんですね)や、硝煙反応という概念がどうやら存在しないらしい事などなど。
それでも、きちんと用意されている証拠や、途中で挟まる読者への挑戦状など、推理をしたいという方には読み応えのある作品と言えると思います。

ちなみに、エラリー・クイーンは男性二人組ユニットです。
クイーンという苗字から女性を連想しますが、実際はいとこ同士で執筆活動を行っていたようですね。
CLAMPのようなもの…というのはやや乱暴ですか。

長門有希の100冊、現在7冊。
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日本の昔話・日本の伝説

今回は2冊、どちらも柳田國男さんの作品です。
柳田國男と言えば『遠野物語』があまりにも有名ですが、これらはそれ以外の地域の民話も含みます。

昔話の方は、『まんが日本昔話』に出てきそうな話を並べた感じ。
知っている話も結構ありましたが、収録された話の数が多いため、まるで知らないものもありました。
一つ一つの話は短いので、気楽に読んでもいいと思います。

伝説の方は、打って変わって民話への考察を含んだ一冊。
ある話が全国でどう伝わっているのかへの考察だけでなく、そこから関連する別の話に考察を進めていく形です。
こちらは、じっくりと腰をすえて読む事をおすすめします。

『まんが日本昔話』に出てきそう、と書いてから思った事。
最近の小中学生に、果たして『まんが〜』は通じるのでしょうか。
ボブの弟さん(高校生)のクラスメートには、『ファイナルファンタジー6』が通じない子がいるらしいです。
ほんの5年前後の差でスーパーファミコンが通じないのですから、『まんが〜』もやはり通じないのでしょうか。
世代の差をひしひしと感じますが、まあせっかく日本人に生まれたのですから、日本の昔話くらい知っておいて損はないと思います。
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VS長門有希の100冊『僧正殺人事件』

ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』です。
この手の海外大物作家による作品は、子供向けに翻訳されたものも多いですね。
小さい頃、図書館で読んでいた記憶があります。

しかし、恐らくこの『僧正〜』は読んでいないでしょう。
理由としては、トリックがどうこう言う作品ではなく、犯人の心理分析のような推理をメインにしているため。
なおかつ、最後の最後に存在するどんでん返しが明らかに子供向けではありません。

ちなみに、『ヴァン・ダインの20則』という戒律(?)が、ミステリ界には存在します。
検索すればすぐに見つかるので省きますが、それを全部読んだ上で以前紹介した『十角館殺人事件』を読むと、違った発見があるかもしれません。

長門有希の100冊、現在6冊。
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VS長門有希の100冊『双頭の悪魔』

わざとかどうかは分かりませんが、手に入りにくい本も多くて困る『長門有希の100冊』。
最初から全部読めるとは思っていませんが、どこまでいけるか頑張ってみたくなりますね。
ヘーゲルの著作など読んでも、理解できるかどうか怪しいですが。

まあ、ともかく『双頭の悪魔』です。
タイトルが恐ろしげなのでどんな話なのかと思ったのですが、なんとも推理小説らしい推理小説でした。
途中に読者への挑戦状なども挟まり、きちんと推理するつもりがあれば犯人はしっかり分かるつくりという感じ。
電車で読んでしまったので犯人は解決編で知りましたが、時間のあるときにじっくりと犯人を当ててみるのも面白いかもしれません。

なお、『双頭〜』は学生アリスと呼ばれるシリーズの一冊です。
前作を読んだ事がない場合はそちらもあわせて読むといいかもしれません。
冒頭で有馬麻理亜のやっている事が、ただ我侭なだけだと感じてしまうかもしれませんので。
前作の事件から麻理亜がいかに立ち直るかが裏テーマのように描かれている気がするので、そこに感情移入できると思います。

長門有希の100冊、現在5冊。
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VS長門有希の100冊『ドグラ・マグラ』

読んだ人間が狂うとか、物騒な曰くつきの一冊です。
しかし、巻末の解説によると発売当時(1935年)は中学生に人気だったとか。
昔の中学生恐るべし、というところなのでしょうか。
なお、この『ドグラ・マグラ』と『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』をあわせて日本三大奇書と呼ぶそうです。そーなのかー。

感想。
狂う狂わないという話は抜きにしても、読んでいる内によく分からなくなってくる構成なのは確かです。
そもそもの前提になっている精神医学の話が正しいのか、主人公はどこまで正気なのか、登場人物のどの言葉が本当なのか。
さらに文章そのものも、合間に入る作中の文書(作中に『ドグラ・マグラ』なる文書も登場します)などによって流れが曖昧になり、ラストで完全に不明になってしまいます。

一番興味深かったのは、作中で扱われている精神医療というテーマ。
1935年以前の知識で書かれているにも関わらず、医学知識を持たない私が読むと比較的信憑性があるように読めてしまいます。
著者の先見の明をたたえるべきなのか、作中で指摘されているように精神医療がまだ未発達なのか。
あるいは、すでに私が著者の手で狂わされているのか。
正確に言うと、読んだ人間が狂うのではなく、自分の狂いを自覚せざるを得ない一冊なのかもしれないと感じました。

長門有希の100冊、現在4冊。
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